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【図書館のお姉さんが「すごいタイトルですね・・」と引いた本】ホラー小説 「姉飼」 ネタバレ感想

そりゃこの表紙だと言っちゃうよね・・・。

 

第10回日本ホラー小説大賞受賞作、遠藤徹氏によるグロテスクホラー・姉飼のネタバレ感想です。表題作に加え、三つの短編が収録されています。

先に本を読んでからネタバレを見てね!!

 

【ホラー小説ネタバレ感想 目次】

 

1. 姉飼

これ読んだ時スゴイ既視感あったんですけど、この小説に出てくるって筋肉少女帯の大槻ケンヂ氏が書いたステーシーっぽいんだよね。

ステーシーは少女ゾンビなんですけど、じゃあは何なのだろう。

 

脂(あぶら)祭りで見せ物にされている姉達に幼少期の主人公が魅入られ、以来、密かに姉を飼育したいと思うようになる。

姉とはからだを杭で貫かれても簡単には絶命しない凶暴化した女型の生き物のことです。姉飼いとは、そんな姉達を飼い殺す人間を指します。

 

主人公は姉達のことを愛しているし、ある種純愛です。ただ変な方向に突っ走っている純愛です。

 

ラストは姉飼いになった青年が自らの破滅を悟り、おそらく最後になるであろう姉を飼います。しかしその姉は、幼少期に行方不明になった幼馴染の少女だった…というオチです。

 

姉の生物学上の分類は不明ですが、アマゾンで捕獲されるという姉たちはそういう生物なのか、それとも元は人間だったのか。

姉自体の説明が不十分なのでよくわからないんですが、強烈に読み進められる一作です。

 

元人間だった姉は杭で貫いてから3日ほどで死に至るのに対し、アマゾンで捕獲された姉は2〜3ヶ月生きるようです。また、元人間の姉は不良品と呼ばれ、生命力が弱いような描写もあります。

 

話の筋はあっさりしてるんですが、全体的にグロテスクな文章が想像力を掻き立てます。

脂祭りの脂神輿(あぶらみこし)の描写なんて胸焼けしそうになる。ドロドロに溶けた脂を担ぐ若衆とか、耐性がないと嘔吐するほどの悪臭とか。

 

不快な脂描写で伊藤淳二氏の漫画「グリセリド」のニキビ脂を思い浮かべてしまう。

 

ちなみにこの脂の原料ですが、うんちのおにく(原文ママ)と呼ばれる豚肉から採れる脂なのだそう。笑いそうになるからやめて。

 

 

2. キューブガールズ

その名の通りキューブをお湯で戻すと生身の女の子が出来上がると言うシロモノ。価格は2〜4万円だって。

 

この女の子たちは性格や外見など自分でカスタマイズできるらしいです。

 

どんな仕組みでお湯でもどすと女の子になるのか、詳しい説明は一切ありません。また8時間後には賞味期限が切れると言うことですが、

期限が過ぎたらどうなるか、そもそも賞味じゃなくて消費ではないのか、など詳しい記述が一切ないので完全に読者の想像に委ねられます。

 

3. ジャングル・ジム

みんなの憩いの遊具ジャングルジムの生活が、一人の女性に出会ったことから崩壊していく話です。

まずジャングルジムっていうのは人間の名前ではなくて、まんま遊具のことです。

 

なのでしょっぱなからジャングルジムが人語を話して人間と交流する画が想像し難い。さらに女性と一夜をともにしたりします。

 

レストランで食事をし、ベッドでの女性との体験は、ジャングルジムにとっては初めてのことだったー・・

 

みたいな文章でもうわけわかめです。しかもさらっとジャングルジムがDTであることを匂わせている。

 

やはりジャングルジムという名の人間かと再度考察したんですが、どこをどう読んでも最後まで遊具のジャングルジムでした。

 

4. 妹の島

姉とか妹とか好っきゃな〜て印象なんですけど、ここでもやはり妹がひどい目に遭います。

姉飼でもそうですが、登場人物たちが喋る関西風のなまりがやけに粗野で怖い印象を与えます。

巨大な果樹園を島全体に展開する男の一族が昔ある少女に集団婦女暴行をはたらき、それによって少女は発狂。少女の兄が殺人蜂を使って復讐するという話です。

 

八つ墓村に行き過ぎたエロと無駄にグロテスクな描写を盛り込むとこんな感じになる。

 

 

【▼タイトルの姉飼が持つ圧倒的世界観に比べるとやや大人しい印象はありますが、その他4編も十分楽しめる内容だと思います。】

 

【▼個人的に好きな作品。変に世界観がしっかり作り込まれています。】